奈摘と金髪

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わたくし、天宮城奈摘の地毛は金髪である。これは変えようのない事実であり、染めでもしない限りは変えられない。この髪の毛のせいで多くの迫害を受けてきたのも事実だ。
お父様はイギリス人だけど茶髪、お母様は日本人らしい見た目だった(容姿は良くなかったが)。それに加え血液型のことも言われた。
お父様とお母様は共にA型で姉2人は上がAB型、下はO型だったのである。
それなのになぜかわたくしだけ金髪で血液型もB型で生まれた。上の姉である万梨阿お姉さまもAB型で生まれたのに責められたのはわたくしだけだった。
これは余談ですが、生物を勉強した過程で隔世遺伝という物があることを知りこの金髪はお父様の先祖からの遺伝だという事が分かって安心したのを覚えている。
血液型については未だに原因が分からないが・・・それでも天宮城の親族たちはわたくしのことを汚いぐらい罵った。
「淫乱娘」だの「取り違え子」だの「不吉な子」だの・・・
そんな状況が続いたためか、小6の時にお母様にこんなことを言われてしまった。
「あなたがそんな髪色に生まれてくるからこんなことになったのよ!この親不孝者!」
その言葉を聞いてわたくしは今までの中で最も怒りを覚えた。
わたくしは自分のことをどちらかと言えば温厚な人間だと思っていたし、あの時ほど怒ったことはないですわ。そしてこう返した。
「わたくしだって金髪に産んでくれなんて頼んでませんわ・・・お母様なんか大嫌い!!!!」
わたくしはその翌日行田市の天宮城本家を出て行った。そして騎ノ風市の別荘に移り住んだのである。
お父様とお姉さま2人は出ていくのを必死で引き留めてくれた。でも決意は変わらなかった。
後にこのお母様は実母ではなく、本当のお母様はイギリスで暮らす日本人のシェリーさんであることが分かったのですがそれはまた別の話ですわ。
小学校は元々騎ノ風市にある私立騎ノ風小学校に通っていたこともあり転校せずに済んだ。
わたくし以外には専属の執事とわたくしを慕ってくれていた使用人の何人か、そして真ん中のお姉さまである琴音お姉さまが一緒についてきてくれた。
万梨阿お姉さまはこの頃から始まったお母様の暴走を食い止めるためにお父様と一緒に行田の本家に残った。わたくしたちはそこで今までのことを忘れ、新しい生活を始めた。
このことを知った友人の咲彩さんたちからはとても優しく接してもらったのを覚えている。
そして受験の時期。私立小学校では中学受験ををして私立中学校に入るのが普通なのである。
「咲彩さんはどこの学校を受けるんですの?」
「私?私立水晶学園。自分のやりたいこと見つけられると思うから。」
「そうなんですの・・・」
わたくしはこの時埼玉からかなり離れたところにある全寮制の学校を強制的に受けさせられそうになっていた。しかし、決意を決めて咲彩さんに言う。
「わたくしも水晶学園うけますわ!」
「奈摘ちゃんの学力なら十分合格できると思うよ。・・・あれ?でも別の中学受けるんじゃなかったっけ?」
「蹴りますわ。どうせ親不孝者とかののしってきたお母様の希望ですから。」
「そうなんだ・・・でも中学校も奈摘ちゃんと一緒にいられるなんて私嬉しいよ。みなちゃんや大学に研究に行っていたアンちゃんも戻ってくるみたいだし楽しみね。」
そこにもう一人の幼馴染である織田倉水萌さんがやってきた。可愛い名前と裏腹にさばさばした性格である。
「咲彩、お前はどこの中学校行くか決まってるか?」
「私立水晶学園に行くつもりだよ。」
「おーそうなのか。実はアタイもだよ。奈摘も水晶受けるのか?」
「そうですわ。今決めましたのよ。」
「今決めたって・・・案外アバウトだなお前も。」
「それでいいのですわ・・・わたくしの実家だって実子を疑ったりする適当な家ですのよ?」
「そうなのか・・・いいとこのお嬢だからそういうの無いと思ってたわ・・・あ、愛麗!お前はどこの中学行くんだ?」
水萌さんはクラスメイトで昔から同じクラスの南星愛麗さんに声をかけた。
里親からの虐待と小学3年生の時に髪の毛を無理やり切られたことによって、それ以降男と散髪が嫌いになってしまったんだとか。
アニメ現実問わず女の子が好きなのでわたくしの話し相手にもなってくれる。
「あたし?あたしは水晶学園行くけど?女子校だし男もいないからせいせいするわ。」
「それなら私たちと同じなのね。愛麗ちゃんは何か目的があっていくの?」
「うんまぁ。嘉月やレナちゃん、凛世と和琴も行くって言ってるし。」
「それならまたみんな一緒だな。全員そろって合格できるといいな。」
「それにしても本当に親に逆らっていいの奈摘ちゃん・・・」
「当然ですわ。だってわたくしは母親よりもみなさんのことが好きですもの・・・」
わたくしの意識はそこで遠のいて行った。

「・・・はっ・・・また寝てしまったのですわね・・・」
夢から覚めたわたくしは机に突っ伏していた自分の体を起こす。
「あのころの夢を見るなんて・・・まだ自分の中では気にしているんでしょうかね・・・」
わたくしは椅子から立ち上がると身だしなみを見るための鏡の前に立ち、ツインテールのヘアバンドを外して髪を解き、
軽く頭を振って髪に着いた癖を無くす。そして鏡に映った自分の姿を見る。
「この髪色で生まれてきたのには何か意味があるんでしょうかね・・・」
自分の髪を触りながらそう思った。
「考えても仕方のないことですわね。実家は実家、わたくしはわたくしで生きていくしかありませんもの。」
わたくしは妙にすっきりした声でそう言った。というよりも言い聞かせた。
すると、部屋の外の扉から執事の声が聞こえた。
「奈摘お嬢様、お風呂の支度が完了しましたが、どういたしますかな?」
「今入りますわ。」
わたくしは風呂に入るために屋敷の大浴場に向かって行った。

今でも夢に見るけれど自分が何者かなんてどうだっていい。
変な髪色、異常な血液型、あり得ない肌色で生まれてこようと関係ない。
わたくしはわたくし。これまで通り生きていけて女の子がいっぱいの漫画が書ければそれでいいのですわ!

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