映画を求めて新宿へ

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ある日のこと。奈摘が映画のチケットを5枚持ってきた。
奈「昨日わたくしが参加していた同人誌のイベントでファンから貰ってきたんですけどよかったらだれか一緒に行きません?」
麗「内容は・・・アニメ映画ね。女の子出るんならあたしは行ってもいいけど。」
凛「愛麗がいくのなら私も連れて行ってください!」
環「このアニメ好きなのよね。アンもつれてってよ。」
嘉「ウチも行きたいわ。」
奈「早々と決まってしまいましたわね。わかりましたわ、この5人で行きましょうか。それとこの中で都心に行った経験がある人はいませんの?わたくし秋葉原以外は得意じゃなくて・・・」
麗「あたしあんまないわよ。っていうか秋葉原の劇場でいいんじゃないの?得意でしょ。」
奈「それが・・・秋葉原の劇場は昨日で公開が終了していますの。」
凛「確かにそうみたいですね。」
凛世がチケットに書いてある日程を確認しながら言う。
環「アンたち学校も家も地元だから、あまり電車も利用しないのよね。」
奈「秋葉原以外ですと・・・日本橋、新宿、上野のいずれかですわね。」
麗「アンに凛世。あんたたちどこか行ったことある?」
環「池袋だったらよかったんだけど、新宿は混んでるから行ったことないわ。」
凛「私は日本橋なら一度訪れましたことがありますが、あまり覚えてません。」
麗「確か騎ノ風駅から西武線に乗り入れて新宿まで直通する電車が出ていたはず・・・」
嘉「そんなんあったっけ・・・」
麗「一回だけ見たことあるのよ。騎ノ風駅から出てる地下鉄のサウスラインは西武線の本川越まで繋がっていたはず・・・最悪そこで止まっても乗り換えれば新宿ならいけるんじゃないかしら。」
奈「そうでしたわね・・・それでは、各自しっかり準備を行って今度の日曜日に地下鉄騎ノ風線の駅に集合してくださいな。乗車券の手配などはわたくしがやりますので。」

そして当日・・・5人は集まってルートの確認等をしながら電車を待っていた。
麗「ええと・・・ここから電車で本川越に向かうと・・・」
凛「乗り継ぎとかは問題ないですかね?」
奈「ええ・・・わたくしが一応有料の快速電車に乗れる快速券を取っておきましたから、これに乗って行きましょう。」
環「有料快速の停車駅は北本と川島、そこから本川越で乗り入れして狭山市、所沢、東村山といったそれぞれの街の主要駅にとまって最終的には新宿に着くみたいね・・・これなら迷わなそうだわ。」
嘉「せやけどまだ分からんで・・・」
そして有料の快速の電車がやってくる。
奈「電車が来ましたわ。駅員に快速券を見せて、それぞれ乗り込んでくださいな。」
しかし、彼女たちは大切なことを見落としていた・・・やってきた電車は新宿行きではなく西武新宿行きである。そう・・・この電車の向かう先は新宿駅ではなく西武新宿駅だということを・・・新宿にある劇場は新宿区の東の方にあるため、西武新宿駅からではかなり離れている。それに気づくものはいなかったのである。

電車の中、5人はクロスシートのような座席に座って、新宿への到着を待つ。
環「こういう席に座っていると旅してるみたいでなんかいいわよね。」
嘉「まあウチらが向かっとんのは都会やけどな。」
奈「あら、都会へ行くのでも充分な旅ですわよ。」
凛「始めていく場所・・・楽しみですね愛麗。」
麗「そうね・・・(この電車西武新宿行って書いてあるけど新宿に向かってんじゃないのかしら・・・)」
環「さっきから黙ってどうしたのよ。調子でも悪い?」
麗「いや、そう言うんじゃないんだけど・・・あんたたちこの電車の行先見て違和感ないの?」
奈「ええと、西武新宿行き・・・新宿に向かってますわよ。」
麗「いや、そう言う事じゃなくてさ・・・あたしたちが向かってるのって新宿駅じゃなかったっけ?」
凛「そうですけど・・・新宿駅のような都市にある駅の場合は地下道などで新宿駅と繋がっていたりするんですよ。」
麗「今調べたんだけどさ・・・新宿と西武新宿ってそれなりに離れているわよ。」
嘉「そうなんか・・・」
嘉月が何か言おうとしたとき、電車が急に停車した。この路線の遠くの駅で人身事故が起こったようである。
奈「人身事故ですの・・・これは厄介なことになりましたわね・・・」
麗「なんか影響あるの?」
奈「こういった路線内でのトラブルが電車の世界では頻繁に起こりますの。おそらくのこの電車は新宿までは行かずにこの先の駅・・・所沢どまりになると思いますわ。」
5人の乗っていた有料快速は所沢の手前まで来ていたがそこで人身事故によって停車したのだ。そして、有料快速は所沢で止まるというアナウンスも流れた。その影響で有料特急の券の分の料金は返金されるようだ。
嘉「返金はええけど・・・これからどうするん?」
環「確かこの所沢駅には西武池袋線も通っていたはず・・・それに乗って池袋まで行ってそこから新宿へ向かうわよ。」
凛「道とか分かるんですか・・・?」
環「池袋なら私が行ったことあるから心配しないで。」
環輝の言葉と同時に所沢に到着したアナウンスが流れる。5人は特急券の金を返金してもらうと池袋線のホームに向かう。
奈「今はアンさんの言葉を信じていくしかないですわ。案内よろしくお願いしますわね。」
環「任せて!」
麗「(アンは池袋に行ったことあっても、西武線で池袋に行った経験ないんじゃ・・・)」
愛麗はそう心の中で思った。そしてその心配は的中することになったのだった。

池袋線のホームに着くと、環輝がある車両を指さして言う。
環「これに乗れば池袋まで行けるわよ。」
麗「ホントに大丈夫なの?」
環「平気よ。これに乗れば池袋まで一直線だから。」
環輝は愛麗と嘉月を電車に乗せながら言った。
しかし、電光掲示板に目をやっていた奈摘があることに気付き、近くにいた環輝の手を引っ張ってホームに戻した。
環「ちょっと奈摘!何すんのよ!」
奈「ダメですわ!これは反対方向の電車ですわ!」
環「反対方向!?」
麗「え、それって・・・」
愛麗がそう言った時、電車のドアが閉まり列車は愛麗と嘉月を乗せて池袋とは逆の飯能市に向かって走り出したのだった。しかもとんでもないことにその電車は快速電車だった。
凛「愛麗!雷久保さん!」
奈「2人を助けるのには間に合わなかったですわ・・・」
環「あれ・・・アン今とんでもない事しちゃった?」
3人は愛麗と嘉月が乗せられた快速電車を見送ることしかできなかった。
凛「追いかけましょうか・・・?」
奈「ですけど、次の列車で快速が来るとも限りませんわ・・・」
環「あ、快速だと6つ先の入間市駅までノンストップなんだ・・・」
奈「なんですって、それでは各駅だと追いかけようがありませんわね・・・」
凛「入れ違いになる可能性もありますし・・・私はここで愛麗たちとの連絡を試みてみますね。」
奈「わたくしは次の快速がいつ来るのかと、ここから入間市までの距離を調べてみますわ。アンさんは入間市からここまでへの戻り方を調べて愛麗さんにメールしてください。いいですわね。」
環「分かってるわよ・・・」
3人はうかつに電車で動くのもまずいと思い、愛麗たちとの連絡や戻れるルートを調べるなど、その場に残ってできることをすることにしたのだった。

環輝のミスで快速電車に乗った(乗せられた)愛麗と嘉月は6つ先の入間市駅まで来てしまった。
愛麗は知らない街に恐怖を覚えるため、ホームのベンチに座って流れゆく人に怯えていた。
麗「嘉月・・・ここどこ?怖いよ・・・」
嘉「愛麗ちゃん・・・」
怖がる愛麗をなだめながら、嘉月は頭の中で考えを巡らせる。
嘉「(なんとか所沢に戻る方法を考えんと・・・だけど入間市なんてウチだって来たことない・・・これからどうすれば・・・ウチも知らない街は正直怖い・・・)」
そんな時、2人に声をかける救世主が現れた。
?「あら?南星に雷久保・・・?こんなとこで何してんのよ。」
声の主は和琴だった。
嘉「和琴ちゃん!!!助かったわ!!!」
和「どうしたのよ急に・・・」
嘉月は和琴に事情を説明した。
和「新宿に行くつもりが羽多野に間違った電車に乗せられてこっちまで来たって事か・・・別にそこまで怯えなくたって反対ホームに行って所沢まで戻ればいいだけでしょうが・・・まあいいわ。あたしが所沢まで連れてってあげるからついてきなさいよ。」
嘉「ホンマにありがとさん。」
麗「助かったわ・・・」
和「反対ホームはこっちよ。」
愛麗と嘉月は和琴に連れられ、上りホームの方へ向かった。
そして和琴の案内した電車で所沢駅に戻ることに成功したのだった。

その後電車に揺られて6駅分通過し、愛麗たちは所沢に戻ることに成功した。
凛「愛麗よかったです・・・」
麗「何か心配かけちゃったわね。」
環「戻ってこれてよかったわ。」
嘉「それあんたが言うことやないやろ・・・」
奈「それにしても和琴さんはなぜ入間市にいたんですの?」
和「入間市でカウンセリング関連のセミナーがあったから受けに行ってたのよ。それじゃ、あたしは騎ノ風に帰るわね。南星に路線図渡しておいたからそれに従えば新宿まで行けるから。」
麗「今日は助かったわ。その・・・ありがとね。」
和「あんたも素直になれば可愛いのにね。」
麗「いちいち一言多いわね・・・」
和「まああたしはこういう奴だから。映画楽しんできなさいよ。あ、それと闇雲。」
凛「なんですか?」
和「南星の奴かなり精神的に不安定みたいだからしっかり付き添ってあげなさいよ。(小声)」
凛「分かりました。愛麗のこと色々とありがとうございます。」
和「あたしは南星と雷久保を所沢まで連れてきただけで特に何もしてないんだけどね・・・まあいいわ、じゃね。」
和琴はそう言うと騎ノ風行の直通電車に乗って帰って行った。
奈「先ほど新宿線が人身事故から復旧したとのことなので、そっちで行きましょう。」
麗「それはよかったわ。和琴に貰ったこの路線図によると、新宿線で高田馬場まで行ってそこから乗換をして新宿まで行けるって書いてあるわ。」
環「このまま池袋線で行った方が確実だと思うけど。」
嘉「その口で言うんか・・・」
環「愛麗、花蜜さんの言い分は放置して新宿線で行きましょう。」
麗「そうね。それがいいわ。」
環「(絶対怒ってる・・・アンが悪いのはわかってるけど愛麗にいい所見せたいだけなのに・・・)」
愛麗たちは話し合いの結果、新宿線で再び新宿へ向かうことにしたのだった。

それから電車に揺られて50分ほど。愛麗たちはようやく目的地である新宿へと到着したのだった。
嘉「色々あったけどなんとか着けたなぁ・・・」
奈「皆さん映画見る体力は残ってますの?」
麗「まだ何とか大丈夫だよ。」
凛「公演が始まってしまいますから急ぎましょう。」
環「そうだね。映画見ないなら何のためにここまで来たか分からなくなっちゃうし。」
5人はチケットにかかれている指定された映画館を探して走り回った。その後、何とか公開されている映画館にたどり着き、2時間にもわたる超大作を5人は楽しんだ。
ちなみに映画の内容は、5人の女子高生たちがたわいもない日常を過ごすアニメの物だった。映画にするには刺激が少なすぎたせいか原作にはないパロディネタやファンタジーネタが大量に盛り込まれていたのだった。

そして、映画の終了後・・・
麗「楽しかったわねあの映画。」
奈「キャラクターもみんな可愛くて素敵でしたわ。」
嘉「ああいうタイプの作品だったとは思わへんかったわ。」
環「映画化するアニメって大半ファンタジー系とかロボット系ばかりだものね。」
凛「そう言うのもあって新鮮でしたね。」
麗「さて、早いとこ騎ノ風に帰ろうか。新宿駅までの道誰かわかる?」
凛「私はちょっと・・・」
嘉「ウチも分からへん。」
環「アンも。」
奈「わたくしもちょっと・・・ここが新宿区なのは分かりますけど。」
麗「確かに劇場探すのに走り回ったからね・・・あ、そこに駅がある。」
愛麗が指さした方向には、地下鉄の駅があった。
凛「ええと、新宿三丁目駅ですね。この駅から新宿駅に行けるみたいですよ。」
奈「それなら問題ないですわね。早速乗って帰りましょう。」
環「そうだね。今日は疲れたし帰って寝るし・・・」
駅の中に表示されている電光掲示板を見ると荻窪行きと池袋行きが表示されていた。
凛「ええと・・・どっちに乗ればいいのでしょうか?」
環「池袋行きじゃない?新宿と池袋って近いし・・・」
奈「たしかにそうですわね。」
話し合いの結果池袋行きに乗ることになり、5人は池袋行きで新宿を目指すことにしたようだ。しかし、やってきた電車に乗ると・・・
麗「ねえアン、この電車逆方向に向かってない・・・?」
環「そう?池袋に向かってるんだから問題ないでしょ。」
嘉「あ、大変や!新宿が通過済みの表記になっとるで!」
嘉月が電車の中にある電光案内版を指して言った。案内板の表記は新宿>>新宿三丁目>>新宿区御苑前となっており、新宿は通過済みとして表示されている。
そう・・・愛麗たちが乗ったのは地下鉄丸ノ内線である。丸ノ内線は池袋から後楽園、大手町、東京を通ってそこから四ツ谷と新宿を経由して中野坂上を通り荻窪に向かっている地下鉄なのである。新宿三丁目駅は新宿の東にある駅・・・つまりは、反対方向の荻窪行きに乗る必要があったのである。
奈「本当ですわ!つまりわたくしたちは逆方向の電車に・・・」
麗「もう!最悪!!!」
凛「私たちって電車とものすごく相性が悪いのではないでしょうか・・・」
その後、気づくのが早かったのもあり新宿区御苑前で反対方向の列車に乗り換え、なんとか新宿まで行けたもののそこから直通の電車が走っている西武新宿駅を探すのにさらに時間がかかってしまい、結局高田馬場まで行って乗換・・・そんなこんなで時間を大幅に消費し、騎ノ風駅に帰り着いたのは18時ごろになってしまったのであった。
奈「今日は疲れましたわ・・・」
嘉「新宿ってあんなに迷う場所やったんやな・・・」
凛「東京がある意味迷路って言われている理由が分かった気がします・・・」
環「大変な一日だったしぃ・・・」
麗「お前が言うな。それにしても・・・都会なんてもうこりごりよ・・・」

~その頃の和琴さん~
和「あ、そういえば帰り道の地図も作ってやったんだけど南星に渡すの忘れてた・・・まあいいか。あいつらもそこまで方向音痴じゃないわよね。」

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